第1章 This is insane
「大丈夫、大丈夫だから」
咳き込みながら友に言うアイツ。
ヒーローとして、いや人として超えてはならない線を飛び越えてしまった。
アスファルトを濡らす涙は止まらない。
「山田、お前本当に何してんだ……」
二の腕をキツく掴まれ怒鳴られた。友の見たことの無い表情と声に驚き顔を上げると、友も、アイツも泣いていた。
「相澤、次でしょ……これ……」
差し出したタオルは真っ白だった。黙って受け取り、タオルの端で涙を拭いた友。光に吸い寄せられていった。
その背中は、ヒーローそのものに見えた。
「山田」
友の背に見とれていると名を呼ばれた。
泣いているのに、真っ直ぐに俺を見て静かに手を伸ばした。
「私と山田の個性の相性、最悪だよね」
汗と混じる涙を拭わず、そう呟いた。
あぁ、やっぱり実況は下手くそだ。友を鼓舞するのにはそんな言葉は似合いやしないのに。
「……最低最悪だ」