第5章 青色ドロップ
翌日の早朝、名前はいつもより一時間も早く目が覚めた。
起きて支度をするにしても何をするにしても時間が余ってしまうな、なんて思ってゴロゴロとベットでスマートフォンを弄っていたが、どうも落ち着かない。
寝て疲れを取ったはずなのに、これだと逆にまた疲れてしまう。
名前は軽い溜め息をはき上半身を起こすと、怠惰な動きでベットから抜け出した。足に絡んだシーツを手で引き剥がし、ベットへと投げ込んだあと、ゆっくりと伸びをした。
ーー幸村くん、今頃なにしてるのかなぁ。
ぼんやりとそんな事を思って、どんだけ自分は幸村くんのこと考えてるの!、なんて頬を上気させ頭を左右に振った。
以前は悶々と考えたりするのが苦手だし嫌いで、兎に角笑って誤魔化していたというのに。今はそれをしようとしてもすぐに幸村精市の顔が頭に浮かんでしまう。
これではいかん、と名前は気持ちをさっぱりすべく気分転換にシャワーを浴びる事にして部屋を早々に飛び出した。
シャワーを浴び、制服へと着替え朝食をとり少しだけ時間を潰して家を出た。いつもより20分ほど早い時刻のせいか、いつも登校の時に見かける立海の生徒達の顔は見当たらない。
それがなんだか楽しくて、名前はスキップしそうになる気持を抑え普段と変わらぬ歩幅で立海大附属中学校までの道のりをのんびりと歩いた。
それから時間がほんの少しだけ流れ、名前は目的地へとたどり着いた。いつもは必ず引っかかる信号にも引っかからず、今日はなにかいい事があるかもしれない、なんて浮かれてしまう。
早く起きただけで、こんなにも普段と違う雰囲気を味わえるのなら、また早く起きてみたいな、なんて事を考えていた名前の足は、気づけばテニスコートへと向かっていた。
ーーこれは、その、幸村くんがちゃんと部活をしているかどうか見るためであって決して幸村くんがテニスをしている所を見たいが為に行くわけではない。断じて、ない!
頭の中で誰にいうでもない言い訳をつらつらと並べながらも名前の足はテニスコートを目指し、そして、辿り着いた。
途端に聞こえてくる部員の掛け声や、球の打つ小気味いい音に思わず心が踊る。