第4章 黄色ドロップ
『名前が今心にあるそれは、気があるとか軽いものじゃない。幸村に、しっかりと恋をしているんだよ』
不二の澄んだ綺麗な声が、名前の耳へと滑り込み頭の中でこだました。
その言葉の意味を理解するのに、少しだけ時間が掛かった。
「わ、私が…幸村くんに、恋?」
『普通は気づくと思うけど…ふふふ』
「わ、笑わないでよ!だって…こんな気持ち、初めてで…。そんなに、突然恋なんて…」
『恋は予告なしに訪れるものだよ。名前、変に肩の力を入れないで君のしたいように行動するんだよ?後からあぁすれば良かった、なんて後悔しないように』
「う、うん…分かった」
少しだけ上擦った名前の返事を聞いた不二は、少しだけ笑い声を上げると、じゃあまた電話するよ、なんて言って一方的に切られてしまった。
ツーツーとなるスマートフォンから耳を話し、通話終了ボタンを押しベットの海へと落とした。ぼすり、と音を立て名前の腹部横に落ちたスマートフォンは、明るかった画面がすぐに暗くなった。
"幸村に、しっかりと恋をしているんだよ"
そう冷静に言い放った幼馴染の言葉を、頭の中で何度も反芻させた。
そう言われれば、そうなのかもしれないと今更ながらあっさりと幸村への恋心を受け入れた。スッキリした気分だ。
「後悔のないように、か…」
恋心を気づかせただけではなく、きちんとアドバイスまで寄越した幼馴染は、やはり自分のヒーローだと名前は頬を緩めた。
ーー明日、どんな顔して幸村くんと話せばいいんだろ。
ふとそんな事を思って、不安に駆られたが…悩んでいても仕方ないといつものように豪快に笑ってから電気を消し明日のため就寝したのであった。