第9章 番外編︰どっちが好み?※R18
そんな名前の心情など知りもしない二人は、左腕を須野、右腕を宮野が掴みまるで捕らえられた宇宙人のようにして名前を引きずり下着コーナーへと向かう。
後ろで呆れた顔をしている朋子に助けてくれと視線を送ってみたが、ひらひらと手を振られるだけで、なにも解決にはならなかった。
下着コーナーへとやってきた。淡い色の可愛い下着や、思わず目を伏せたくなるような色っぽい下着まで色んなものがある。
いつも下着を買う時は母親と来ていたため、友人達ときた下着コーナーに、少しだけ居心地の悪さを感じつつもきょろきょろと視線が動いてしまう。
ーーあ、あの下着可愛い!あ、けどこっちも…ん?いや、待てよ?ていうか、なんで私下着コーナーにいるんだっけ?
名前は淡い黄色の下着へと伸ばしていた手を引っ込めて、ふとそんな事を思った。
そもそも買い物をしよう、と連絡を寄越してきたのは朋子の筈だ。なのに、その当の本人は名前そっちのけで下着を物色している。
ーー自由人というか、なんというか。ま、そんなとこが朋子らしいんだけどさ。
と、そんな事を考えている名前の視界に、にゅっと須野と宮野が映り込んできた。突然の事に間抜けな声をあげ、思わず足が後退してしまう。
しかし、そんな事などお構い無しな二人は名前が後退したぶん、詰め寄り大きく口を開いた。
「名前!これ、貴方にとっても似合うんですの!オススメですの!」
「駄目だよそんな真っ白でふりふりしたの!純粋です~って感じでつまんない!名前ちゃん、これ!これ!これどう?幸村くんこういうの好きそう!」
「なんですの、そのどぎつい赤色!…?!し、しかも、なんですのそれ!大事なところが隠れてませんの!」
ぎゃーぎゃーと騒ぎながらそんなやり取りをする二人に、店員のぎらりとした視線が飛んできて、名前は体を跳ねさせ、落ち着くようにと宥める。
すると、不意に肩を叩かれた。反射的に視線をそちらへと向ければ、朋子がそこに居た。肩を叩いた方ではない方の手には、下着がある。