第7章 赤色ドロップ
丸井ブン太と苗字名前は、お付き合いをする事になった。とは言え、条件つきでのお付き合いなのだが。条件は至ってシンプルなもので、名前が"もういいや"と思ったらすっぱり別れる、というものだ。
その"もういいや"が来た時は、丸井は素直に別れを受け入れなければいけない。
しかし、その条件を丸井にも同じように名前は設けた。丸井自身が"なんか違うな"とか"もういいか"と思った時は、名前は素直にそれを受け入れる。
そう提案した名前に、んな事思わねぇし言わねぇよ!、と丸井は唇を尖らせ少し怒っていた。
今の時刻は16時10分。場所は3-Cの教室。人がほぼ居なくなった教室で、名前は日直の役目である日誌を書き終え、ゆっくりと椅子から立ち上がった。
使った筆記用具などを筆箱の中に詰めて、それを鞄に詰めチャックを閉めたところで名前は小さな溜め息を吐き目前にいる彼氏ーー丸井ブン太へと視線をやった。
「丸井くん、見すぎ」
「あー?別に普通だろ。つうか、終わったか?んなら、デートしようぜ、デート。放課後デートだ」
そう言って笑った丸井は、椅子から腰をあげスクール鞄をリュックのように背負った。
「無理だよ、私部活だし。ていうか、丸井くん勉強しなくて大丈夫なの?金曜日に再テストあるんじゃないの?」
「うっ…嫌な事と思い出させんなよ」
「いや、忘れてちゃだめでしょ!ちゃんと勉強してる?」
スクール鞄を肩にかけながらそう問うた名前に、丸井は少しだけ視線を泳がすと、ちょっとな、とだけ答えた。
ーーあ、これやってない人の反応だ。
そんな事を思って、軽いため息が出てしまう。が、なんだか面白くなってきてしまって肩を揺らし笑えば、訳が分からないといった表情を零した丸井。なんだよ、笑うなよ…と言葉を紡ぎ、唇を尖らせ不貞腐れている。
そんな丸井に未だ笑ってしまいながらも、ごめんごめんと謝ったあと、残って予習復習をしていた真面目な男子生徒に一声かけてから二人は教室を後にした。
教室から廊下へと出れば、そこは窓から差し込む夕日によりオレンジ色に染まっていた。
まるで異次元みたいだ、なんて思いながらオレンジ色の不思議な道を歩きながら、名前は口を開いた。