第1章 回想
「ありがとう。いいんだよ、君が責任を感じることは何もないんだ。こまちまちこは必ず私達が助け出す。待っていてくれ」
優しい人だな、と感じた。
結局、せっかくお忍びで来たのに、何の手がかりも得られず、空振りで大野課長は第5やたがらす丸に戻ることになったけれど、見送った私の両親は、大野課長が不思議なくらい、穏やかな笑顔だったと、顔を見合わせて話していた。
二度目はこまちまちこさんが異次元獣になって戻って来ると分かった時。
大野課長は、私に会いに来てくれた。わざわざ私のために、こっそり一人で会いに来てくれたと分かった時、とてもビックリした。
「こまちまちこの友達の君が今、一番つらい思いをしているだろうと思ったんだ。……だから、会いに来た。茶の間戦士、神月風音。茶の間で私達と一緒に戦ってくれ。こまちまちこを助けよう!」
「はい!」
LET'Sのポーズを取った私に、大野課長は小さなピンを手渡してくれた。てれび戦士の胸についているのと同じバッジだった。
バッジを受け取った私は、よほど緊張した顔をしていたのだろう。大野課長はふっと笑って、私の背中を優しくポンポンと叩いた。
「大丈夫だ。こまちまちこは必ず助ける。そして、いつか全ての戦いが終わったら、私は未来に帰り、平和な世界の訪れを、どちゃもん達と未来で待ってる」
「はい!」
そのバッジは今、私の服の胸についている。私の宝物だ。