第1章 回想
『未来で待ってる』
優しい笑顔で最後にそう言って、その人は去った。
足湯に浸かりながら、私はぼんやりと空を見る。四月の早朝の青空は、とても優しい色をしている。
私は神月風音。中学一年生。この三月まで、私は『戦士』だった。と言っても、自宅のテレビの前で、リモコンを動かしている『茶の間戦士』だったけれど。
西暦2114年の地球から、異次元獣という怪獣が現われて、私達の時代の地球に接近するという事件が起こり、それを防ぐために、西暦2114年の「国立異次元獣対策センター」の「時空関係調整課」の人達が、私達の時代にタイムスリップして来ていた。彼らは、てれび戦士達と、唯一異次元獣と戦える精霊「どちゃもん」を探し、日本中を回っていた。
結局、全ての原因だった次元ホールを封じて、異次元獣が現われない世界を作ることを、未来人とてれび戦士は選んだ。それは、私達の時代に来ていた「時空関係調整課」の人達の運命を変えることだったけれど、それでも計画は実行され、成功した。「時空関係調整課」の人達が現代に来るという未来は変わり、彼らは消えていった。
でも、私は信じている。未来できっとあの人達は元気でいる。だって、あの人――大野拓朗課長は笑って言ったのだ。『どちゃもん達と、未来で待ってる』って。