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ドルフィンを待つ夜【インディゴの夜】

第2章 異変


 それからしばらくして、大迫歩美がとある事件に巻き込まれて、しばらくindigoの裏方で働くことになったと、風音は知った。ジョン太の話では、テツとの距離もかなり近づいていて、交際まで秒読みらしい。
 indigoというのは、これまた変わったホストクラブで、ホストクラブ営業の傍ら、様々な知識と能力を持ったホスト達を活かして、探偵事務所のようなことをやっているらしい。困った時は、indigoのメンバーに相談すると、店長の高原晶自ら、率先して、事件を解決してくれるという噂だ。
 一緒に仲良く働いているというテツと歩美の姿が見たくなくて、自然と風音の足はindigoから遠のいていた。
 会社帰り、いつもならindigoに寄る時間帯の電車内、渋谷駅に滑り込んだ車内で、そのまま降りずに済ませようと考えていたら、携帯の電話が鳴った。画面に『テツくん』の文字が映し出される。
 営業ならメールで済むはずなのに、電話がかかってくるなんて予想外で、とっさにホームに降りて、電話に出ていた。
「もしもし、テツくん? 電話なんて、どうしたの?」
『ごめん。なんだか急に風音ちゃんの声が聞きたくなって』
 泣いたような声だ。何があったのか不安になって、耳をそばだてる。
『俺さ、フラれちゃった。……俺、パセリなんだ。誰にも食べてもらえない余計なモノ』
 その声があまりにも寂しそうで、悲しそうで、とっさに言葉が転がり出ていた。
「テツくん。私、今からindigoに行くから、指名していい?」
『えっ!?』
「電話のタイミング良かったよ、ちょうど今、渋谷駅のホームにいるんだ。待っててね」
――歩美さんは何故、テツくんをフッたのだろう。歩美さんもテツくんのことが好きなように見えたのに。……テツくんはどうして自分がパセリだなんて言ったんだろう。『嫁き遅れ』の意味だなんて言わなければ良かった。
 電話を切った後も、疑問がグルグルと回っていた。
 indigoに着くと、照れた笑みでテツが出迎えてくれた。少し瞳が赤い。やはり泣いたのだろうか。
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