第2章 行方知れずの君
信長「引け、秀吉。其奴を責めても何の益もない。貴様も、もう下がって良い」
女中は真っ青な顔のまま頭を垂れ、襖をそっと閉め去って行く。
信長「あの女は城下をふらふらと散歩するところがあるからな…本当に退屈しない女だ」
秀吉「はっ…しかし、まだ安土にが来て日が浅く、いくら信長様のお膝元である城下と言えど、この様に暗い道では何かしらの危険も考慮せねばなりません」
光秀「だが、秀吉とて あの小娘に対しての警戒は容赦無かっただろう?案外お前が恐くてあの小娘は帰って来れないのかも知れないな」
秀吉「………俺が警戒するのはあいつに限った事じゃない」
光秀の言葉に顔を曇らせながら呟く。
政宗「まぁ、が出掛けてからかなりの時間が経ってるのは間違いねえ。この雨じゃ音も声も掻き消されてしまうからな。さっさと探し出して訳を聞けば解決することだろ」
政宗の言葉に武将たちは頷く。
信長「城下へは俺と秀吉、政宗が出る。他の者は城で待機していろ。夕餉は、あのじゃじゃ馬を連れ帰ってからだ」
家康「俺もいきます。あの子のことだから、絶対怪我してるだろうし」
政宗「何だ家康、何だかんだ言ってお前もを心配してるじゃねぇか」
家康の言葉にいち早く政宗が反応し、ニヤリと笑う。
家康「…冗談はやめてください。怪我の治療が遅れると後々面倒なだけです」
ふいっと政宗から視線を外すが、図星を刺され居心地の悪そうな顔をしている。
信長「ふっ、お前の性格も難儀なものだな」
(まだあの女がこの安土城に現れて日が浅いが、此奴等の中にこれほど入り込んでいるとはな…)
家康「…放っといてください」
信長「まぁ良い。行くぞ」
ひらりと羽織を翻し広間を出ていく。
秀吉・政宗・家康「はっ!」
三成「皆さま、お気をつけて!」