第10章 ~奪還、そして想い~⭐秀吉ルート⭐
秀吉が点ててくれた抹茶は、きめ細やかに泡立っており、心地よい香りを醸し出していた。
秀吉「ほら、今夜は所作なんて気にせずに気楽に飲めよ?」
「ありがとう、でも何か、飲むのが勿体ないね」
秀吉「ん?そうか?お前が飲みたくなったらいつでも点ててやるぞー?」
ポンポンと撫でる手つきは、子供をあやすように優しく、安心するような心地だった。
秀吉「ほーら、冷めないうちに飲まないと美味しくなくなるぞ」
「そうだね!じゃあ、いただきます」
秀吉「おう」
そう言う秀吉もまた、流れるような所作で自分のお茶を点てていく。
はゆっくりと口に含むと、抹茶の香りとまろやかな苦味が口に広がり、全身の力が抜けていくのを感じていた。
「美味しい……」
は、ほっとしたように息を吐き、小声で呟く。
秀吉「…少しは力が抜けたか?」
「うん、秀吉さんのお陰だね!いつもありがとう」
秀吉は、少しだけ微笑んだの顔に安堵の溜め息をつく
秀吉「言っただろ?可愛い妹の為ならどんなこともしてやりたいし、甘やかしたいんだ」
(は信長様の気に入り……俺がどうこう出来る訳じゃないし、やってはいけない。
ましてや、妹以上の感情を持つことなど、あってはならないんだーーー)
秀吉はに対しての己の感情に蓋をする。
「そっ、か……そう、だよね」
(秀吉さんにとっての私は、ただの妹なんだから、こんなに優しくしてくれるんだよね
ただの可愛い妹だから……優しくしてくれるのに、それ以上の理由は無いんだよね)
もまた、秀吉に対し 優しくて、頼りになるお兄ちゃんという感情では済まされない思いに気付きながらも、そっと蓋をするのだった。
先程までの和やかな雰囲気から一変したように、重苦しい雰囲気が二人を包み込む。
「っ…せっかく、美味しいお抹茶を点ててもらったのに、何だかしんみりしちゃったね!これ飲んだら、もう部屋に戻って寝るよ!夜更かしすると、お兄ちゃんに心配かけちゃうし!」
あんなに出来なかった笑顔が、こんなときに限って容易に出来てしまう。