第10章 ~奪還、そして想い~⭐秀吉ルート⭐
ーーが部屋で待っているーー
ただそれだけの事なのに、秀吉の気持ちは浮き立ち、偵察する足取りも軽くなる。
(早く戻ってやらないと、が寝るのが遅くなるからな)
そう自分に言い聞かせながらも足早に見回りを済ませ、自室へと向かっていく。
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ーーー
早足のせいで上がった呼吸を落ち着かせ、襖の前に立つ。
(自分の部屋に戻るのに緊張するなんてな)
秀吉は心の中で呟くと、少し苦笑しながら襖に手を掛け、ゆっくりと開ける。
「あ、お帰りなさい、秀吉さん」
は秀吉に言われた通り、部屋で座って待っており、戻ってきた秀吉に気付くと優しい口調で告げる。
ーーーお帰りなさいーーー
ただこの言葉ひとつに秀吉は心臓が鷲掴みされたような心地になるのだった。
秀吉「ん…ただいま」
ーーードキンッ
ふんわりとした秀吉の嬉しそうな顔を見たもまた、鼓動が高鳴るのを感じていた。
(何で…?秀吉さんの笑顔なら、もう何度も見てるのに、初めて見たような笑顔みたい)
秀吉「何か、こういうのっていいな…」
「え……?」
秀吉「部屋に帰って、にお帰りって言って貰えるのが、こんなに嬉しいなんて知らなかった」
(に言われるのと、女中や家臣たちに言われるのとでは全然違うな……)
優しい笑顔のまま、ゆっくりと部屋に入り茶器を手に取ると、慣れた手つきでお茶を点てていく。
(…今、さらっと照れること言ったよね)
ドキドキとうるさい鼓動を聞きながらも、全く無駄の無い流れるような所作にはただ、見とれてしまう。
見とれている間に、スッとの前に点てられたばかりの湯呑みが置かれる。