第9章 ~奪還、そして想い~⭐家康ルート⭐
家康「、ちゃんと呼んで」
優しく名を呼び、まるで請うようにそう言うと、そっとの頬に手を添えるーーー
はピクンと肩を震わせるが、ゆっくりと家康に視線を合わせる。
「家、康……?」
家康「……うん」
「家康……」
家康「…ぎこちないけど、その方がいくらか マシ」
そう言うともう一度 優しく微笑み、頬に当てていた手を離し、その手でゆっくりとの髪を撫でる。
(あっっ……!!)
「この手だ」
突然、目を見開き、家康にそう告げる。
家康「は?……何?」
は膝に置いていた手をきゅっと握り、家康の顔を見据える。
「あの、ね…あの夜、信長様に抱かれたまま気を失ったあとのこと、私あまり記憶がないんだけど…寝てる間、誰かが私の髪や頬を優しく撫でてくれてたの」
家康「……うん、それで?」
(それって……もしかして)
家康は、あくまでも冷静に聞くが、心の中では自分の存在があの日の記憶に残っていることをどこか嬉しく感じていた。
「でも、それ以来 無くなっちゃったから、その手が誰だったのか分からなくて、ずっと考えてたの」
(あの時、眠ってはいたものの得体の知れない不安に押し潰されそうになってた心が、その手が触れてる間だけは穏やかになったのが自分でもわかった)
家康「そう…」
家康もまた、湯呑みを置くとぽつりぽつりと話すの髪を優しく撫でながら静かに耳を傾ける。
「でもね!今やっと、あの時の手は家康だったんだってわかったの。
ありがとう、家康」
そう言うと、陽だまりのような優しい笑みを家康に向ける。
家康「っ……!!」
ーーーその笑顔が…ずっと見たかったーーー
少し苦しげな顔をすると、ゆっくりとの体を抱き寄せる。
「家康…?」
家康「あんた…笑うまで時間かかりすぎ。どれだけ待たせたと思ってるの?」
抱き締められたまま、あの夜のように優しく髪を撫でる手の温もりを再度感じ、もまた、静かに家康の背中に腕を回す。