ロリコン王子(絶倫)をドMに覚醒させようとする悪役令嬢の話
第6章 王子(仮)に攫われた先は、攻略者の一人でした6
ゾクッと背筋が凍った、私はもしかするとここで死ぬかも知れない…でも彼が誰を待っているのかが分かった。私の細い首筋を片手で掴んだ男、カンナは中々力を込めて来ず静かに問い掛けて来る。
「この俺の本名を知っているのは、俺だけだ…正体がバレると仕事に支障をきたすからな。だがアンタは俺の本名を顔も見ずに、なんの躊躇もせずに言い放った…お嬢ちゃん。何者だ?」
「公爵家の令嬢です、それ以上もそれ以外もないわ…」
「ただのご令嬢が、王子の姿の俺を見て直ぐに分かったのは普通じゃないだろ…」
「彼は、私の事をクリスティーナ嬢とは言わない…だからよ」
アンタ等はそう言う仲なのは知っていたが…あの優男王子、こんな餓鬼に手出すロリコンかよ。そう鼻で笑うカンナにそれは私も同感だと思う。
「貴方は私を殺せない」
「首を絞められそうになってるつーのに…随分の余裕だねぇ」
「分かるの。貴方は殺したいくらい…その人の事を好きで、愛されたいと願って来た。ずっと傍にいたかった人!」
カンナに会って思い出した。とても大事な事、私も愛して止まなかった人、原作ではどうなった?出て来なかった?あの人は……アンナは、私を庇って死んだのだ。この乙女ゲームには友情エンドというのが存在する。誘惑する王子をそっちのけでライバルキャラであるクリスティーナに何度もめげずに話し掛けると好感度がちょっとずつ上がって行く。嫌味ったらしい台詞から、デレた時が最高に可愛くて…仲良くなった時に話しをしてくれたのは、彼女の過去。大切なアンナが私を庇って死んだと言う事だった。どうしてそうなったのか、それはしっかり教えて貰えなかったけれど…これが彼女を死なす結果になったとすれば?
「アンナは、絶対に殺させないわ」
「やって見ろよ、お嬢ちゃん…」
泣きそうな顔で笑ったカンナに、ほらね?やっぱり好きなくせに…そう離せと首を両手で掴み押し退けた。