第3章 初めまして、のその前に
「(そう言えば、天女様ってなんなんだろ…?
ざっくりと理解できてるのは、平成から来た人をそう呼んでるってことくらいなんだけど…)」
そもそもどうして天女さま呼びになってるの…?
天女と言えば、羽衣伝説だよね?
でも、それと未来から来たことがなんの関係が…?
そもそも…タイムスリップなんて非現実的なことをしたと確信している理由は…?
「(ダメだ、考えが纏まりそうにない……)」
「おい、どこまで進む気だ」
「えっ、あれ?」
声を掛けられて、鉢屋くんを追い越していることに気づいた
ダメだなぁ、考え事を始めると周りが見えなくなる…。
「おい、ボーッとするな。医務室に着いたぞ」
「はい…あれ??」
気のせいでなければ絶対今おいって言ったよね??
懲りずにまた考え出した私も悪いんだけども……。
会って間もないにも関わらず、私の扱い雑になってきたね??
私も同じくらい君の扱い雑になりそうだからいいんだけどね??
「新野先生、天女様を連れてまいりました」
「し、失礼します」
声を掛けるとさっさと入室していく鉢屋くんに続き、慌てて入室する
この際扱いが雑になってきていることは置いておこう、考えても仕方ない…。
医務室の中には、新野先生の他に
色素の薄い髪色をした青年?と紫色の髪色をした男の子が居り、私に気づくと目を見張って驚いていた。
私も、新野先生以外が居たことに驚き、挨拶がどもってしまったのは気にしないでもらいたい…。
「はいはい、お待ちしてました。
傷は痛みませんか、天女様?」
「動かさなければ、そこまで……」
夜分遅くに怪我の手当てをしてもらっていることに対して、謝罪や感謝を伝えたいが上手く言葉を紡ぐことができず口をつぐんでしまう。
「そうですか、なら良いのですが…。
あぁ、伊作くん包帯を。数馬くんは傷薬を」
「分かりました」
「はい!」
こちらを見て驚き固まっていたが、新野先生に声を掛けられると素早く返事をすると2人は動き始めた。
鉢屋くんは襖の傍に座り、こちらの様子を伺っているようだ。