第14章 転入試験
残りそうな傷はリカバリーガールに治癒してもらったが、小さな擦り傷は絆創膏を貼ってもらっただけ。轟くんは不意にわたしの手を取って、手の甲に貼られた絆創膏を指でなぞる。
「な、何…?」
「…悪い、俺、お前のこと、守りたかった。別にお前の母さんに言われたからとかじゃなくて、ただ俺がそうしたかったから、そうしてた。」
ぎゅ、とわたしの手を握る力が強くなる。
「……けどお前は、守られる程弱くなんかなくて、…なんつーか、それって全部、俺の、……エゴ、だった、悪い」
「そっ、そんなこと…!」
なんで轟くんがこんなに申し訳なさそうにしてるんだ、元はと言えば、轟くんに甘えていたわたしが悪かったんだ。強くなろうと誓ったのも、雄英という大きな壁に本気で挑戦しようと思ったのも、全部、轟くんのおかげなのに。
「合宿の時、轟くんが自信持てって言ってくれたから前に進めたし、今回だって、轟くんががんばれって言ってくれたから、わたし頑張れたんだよ」
「…蒼井、」
「前に進むきっかけをくれたのは轟くんだったんだよ、そうじゃなきゃわたし、雄英どころかヒーローになることすら諦めてたかもしれないし。…だからそんな泣きそうな顔しないで」
「…んな顔してねぇ」
轟くんはふい、と下を向いて前髪で顔を隠してしまう。こんな轟くんを見るのは初めてで、なんだかちょっと、新鮮だ。
微かな風になびく前髪をするりと撫でた。いつもわたしがやられているように、指で前髪を梳く。轟くんはわたしの髪がさらさらだと言うけれど、轟くんも大概だ。
「轟くん髪の毛さらさらだね」
「…お前の方がさらさらだろ。」
まるで悪いことをした後の子供のような轟くんの表情に胸がぎゅっとなる。なんて言えばこの気持ちは伝わるのだろうか、言葉にし難い気持ちに胸がざわざわする。もどかしい。
「…あの、」