第12章 2度目の夜。
「……」
十分すぎるほど睡眠を取った後は、自然と目が覚める。むくりと身体を起こすとそこに轟くんの姿は無かった。
床で寝ていたはずが、いつの間にか轟くんの寝ていたソファに横たわっていた。轟くんには本当に面倒を見て貰ってばかりだ。
ふと廊下の方から話し声がする。轟くん、誰かと電話してるのかな。
「…轟くん…?」
「…今、起きてきました。…はい、大丈夫です。…それじゃ。」
「……お母さんでしょ。」
「ああ。蒼井すげぇ心配されてるぞ。」
わたしに連絡してくれたらいいのに、なんで轟くんなんだろう。
心配してくれるのは有難い。事実昔から厄介事に巻き込まれることが多く、何かと心配させてばかりだ。
「…おはよう。」
「ッお、おはよう…。」
優しく頭を撫でられる。寝起きだというのに心臓に悪い。リビングに戻っていく轟くんの後に付いて戻り、カーテンを開ける。日差しが眩しい、今日も暑くなりそうだ。
「朝ごはん、どうしよっか。ご飯とパンどっち派?」
「…蕎麦。」
「ご飯かパンかって聞いたんだけど!…でもお蕎麦あるよ、茹でようか?」
「ん、…あったかくねぇやつ。」
「あったかくないそばが好きなの?」
轟くんは無言でこくりと頷く。キッチンの棚から蕎麦の袋を取り出し、「どれくらい食べる?」と問うとこれくらい、と1.5人分くらいの量を取る轟くんに自然と笑みがこぼれる。なんだか子供みたいで、かわいい。
「…なんだ。」
「ううん、今作るね。」
料理は上手い方じゃないけれど、蕎麦を茹でるくらいならわたしだってできる。大きな鍋でお湯を沸かす。隣では轟くんが二人分の蕎麦の束を持ってお湯が沸くのを待っていた。
…なんか、こういう風に2人でキッチンに立ってると、…夫婦、みたい、なんて。
「い、いやいや、わたし夢女すぎ…」
「夢女?」
「うっ、ううん、なんでもない!」
料理、もっと練習しよう。嬉しそうな轟くんをちらりと見ながらそんなことを考えていた。