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【短編集】テニスの王子様

第4章 Secret feeling 【白石蔵ノ介】


でも大きな瞳は驚いた表情で俺を見とった。

――あぁ、やっと目が合うたなと思った。

「白石くん…?あの…」
「迷惑やったら言ってな?」

彼女の困惑した声を無視して静かに髪を撫で続ける。
優しい彼女の事やからこう言えば余程の拒絶感さえなければ拒否されへん事をわかった上での行動やった。

「勝手に触って堪忍な…」

俺の言葉に静かに首を横に振る彼女。
戸惑いはあれど拒絶はないようで安堵する。

「…あんな、こんなタイミングで言うの狡いと思うんやけど…ずっと【名字】さんのこと好きやったんよ」

髪を撫でながら静かにそう告げる俺をまた驚愕した表情で彼女は俺を見とった。

「俺じゃ…あかん?」

切なげな表情に見えるように微笑むと彼女が少し息を飲むのがわかった。
突然の事で理解が追いついておらんのか、狼狽えて言葉にならへん声が微かに漏れとるのを静かに俺は聞いとった。

「し、白石くんが私を?」
「去年からええなと思っとったわ。タイミング逃していえへんままやったんよ。こないな、ズルいタイミングで告げるの良くないと思うけど、泣いとる【名字】さんほっとけへんわ」

俺の言葉を聞いて彼女は熟考しとった。
きっと彼女の性格からしてこのままでは頷くとこはないと思っとった。
だから俺は優しい彼女に懇願するように告げた。

「俺のお願い聞いてくれへん?」

俺の言葉の出だしを聞いて彼女は静かに耳をすませとった。

「今はまだ好きでなくてもええねん。ただ俺の我儘として付き合ってくれへん?」

そう懇願するように告げれば、優しい彼女が無碍に出来へんのは分かっとった。
今もどう返事すべきか悩んどるのが手に取るように分かった。
もう一押しやと思った。

「な?」

そう告げてぎゅっと彼女の上半身を抱きしめる。
互いに椅子に座っとったから、彼女が俺の力で雪崩込むような体勢でこちらに引きづられとった。
そして耳元で囁くように『【名前】』と、彼女の名を告げると彼女は耳を真っ赤にしてゆっくりと頷いた。

あぁ、この時を待っていた。と思った俺は更に彼女を抱きしめる力を強めた。
そして彼女には見えない位置にある俺の顔が自然と笑う表情になっていくのが自身でも分かった。
そう、ゆっくり…ゆっくり俺の事を理解して貰えればええんやと、俺は静かに笑っとったのやった。


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