第3章 不器用な人 【財前光】
「先輩」
「んー?」
「3年の先輩に好きな人でもいるんっすか?」
「はぁ?!」
俺の馬鹿みたいな発言に余程驚いたのか先輩が驚愕した表情で俺の方を向く。
大きな瞳が更に見開かれておもろいなと思ってしまう。
そして自分のアホくさい発言に嫌気がさした。
こないなアホくさい事言うやなかったと後悔した時には口から漏れとったのやからほんまに恋はするもんやないと思った。
「3年の先輩におらへんよ?何?財前、恋バナとかするん?」
「いや別に。…変な事聞いてすんません」
「いや、別にええんやけど。驚いたわ」
アハハと笑う表情は驚いたと言うより何か言いたくない事を隠そうとでもしている様な表情にも思えた。
いつもはちゃんと人の目を見て話す先輩の目が泳いどる。
先輩わかりやすすぎやろ…と心の中で突っ込んだ。
これじゃ誰かしら好きな人がおると態度で示しとるもんや。
今まで自分の事に必死で先輩に好きな人がおるっちゅう事を考えた事もなかった。
いるんやな…と思うと、ジワジワと胸が締め付けられるのを感じて俯く。
すると横から俺の名前を呼ばれた。
「……財前」
「なんっすか?」
「……せやから、財前」
「だから、なんっすか?」
突然先輩が何度も俺の名前を呼ぶから俯いとった顔をあげると、顔を真っ赤にして俺を見とる先輩と目が合う。
なんでそないな顔が真っ赤なんや?と疑問に思いながら先輩を見ると、先輩はやけくそにでもなったのか突然椅子から立ち上がって俺を見下す様に見下ろしてきた。
「せやから財前が好きなんだってば!」
「……は!?」
突然の告白に驚きすぎて反応が遅れる。
先輩は立ち上がっとったのにしらん間にしゃがみ混んでしまっとった。
『言うつもりなんて無かったのに』『なんで言っちゃったんだ』なんてブツブツと先輩の声がうずくまっとる場所から漏れ出とった。
あまりに驚きすぎて咄嗟に何が起きたか分からなかったが先輩から告白されたっちゅう事実に今更実感が湧いてきて自分の顔が熱くなるのを感じる。
そして俺も椅子から立ち上がってしゃがみこんでいる先輩の横にしゃがむ。