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【短編集】テニスの王子様

第3章 不器用な人 【財前光】


朝のHRで最初にくじ引きを引かされて当たりと書かれた物を引いた時は何が当たりやと思っとった。
卒業式の実行委員会とかいうのに無理やり選ばれて最悪や。
その実行委員会では何もやる気せぇへんから適当にしてたら、花紙で飾り付けの花を作る係に任命されて適当にそこらへんに並べられてる花紙を持っていってくれと言われ何となく手にした緑色の花紙の袋に誰かの手も重なる。
驚いて顔を上げればよう見知った人物もこちらを見て驚いた声をあげた。

「財前?!」

【名前】先輩が、俺を見て驚いた声を上げたのやった。


***


誰もおらん部室で2人きり。
俺の向かい側の席に座った先輩が黙々と花紙から花を作っとった。
その姿を見ていて俺は率直な感想を述べる。

「まじで不器用なんっすね」
「…ほっといて」

俺の突っ込み対して、先輩はムスッとした表情で返事をする。
そないな表情を見ても可愛らしいとか思ってしまう自分がいて今までこないな事、思ったことも無かったのに重症やなとため息をつく。

数日前に1,2年の各クラスから選出された卒業式の実行委員会に俺と先輩はそれぞれ入っとった。
俺の場合はやりたくもないのにくじで当たりとか言うのも引かされただけやけど、彼女は自分からやると立候補したと聞いて俺は驚いた。
なんでこないな邪魔くさい事やろうと思ったんっすか?と聞いたら、3年の先輩にはお世話になったから、なんて返されてしまいまたもや驚く。
義理堅いんやなと思った。

先輩と俺の関係はテニス部の部員とマネージャーっちゅう割と運動部ではありふれた関係性やった。
色々と紆余曲折を経て入部したテニス部に彼女はいた。
今の2年の先輩たちと同時期にマネージャー志望で入部した人で、部活の最中は黙々と作業しとる人だなと最初は思っとった。

無口なのかと思えば、それはマネージャー業をしとる時だけで普段は話しかけられれば明るく返事をするし会話もする。
会話をしとる時はコロコロと表情が変わって喜怒哀楽が激しい人やと思った。
それが見ていて飽きへんなと思ってしまう様になるのは割と早かったと思う。
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