第18章 ◆番外編5「狼」
主はふむふむと納得したあと、それはどうすればいいのだろうと想像する。
部屋へ向かう長谷部とくっついて歩きながら、ほとんど上の空となっていた。
──主の部屋へ到着すると、障子の前で向き合い、長谷部はおやすみの挨拶をしようとする。
「それでは主、温かくして眠ってくださいね」
彼女は優しい表情でそう言った長谷部とここで分かれるのがなんとも寂しくなった。
彼が最後に彼女の羽織りを直そうと手を伸ばしてきたとき、主は思いきって、長谷部の胸の中に飛び込んだのだ。
「主っ…!?」
これだけではおやすみのハグと変わらないため、主はすぐに次の行動を考える。
かといって口づけもおやすみのキスとそう変わらない。
(よし…!)
驚いて慌てている長谷部の懐に潜り込んでいる主は、背伸びをして彼の首筋に唇を押しあてた。
「…っ…」
長谷部は体を震わせ、身動きがとれなくなる。
彼女を抱き返せず浮かせているだけの指先まで固まり、まるで彼だけ時が止まったかのような反応だ。
「ん…」
─ちゅ…─
本当は跡をつけたかった主だが、うまく吸えずに首筋に柔らかな口づけをしただけとなった。
まだ長谷部に反応はない。
それが恥ずかしくなった彼女は、しばらくして赤い顔を上げると、
「……がおー…」
爪を立てる狼のジェスチャーをしながら、照れ笑いでそう言った。