第18章 ◆番外編5「狼」
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今月に入って何度目かの宴会。
主は長谷部の隣で、燭台切の作った甘い飲み物を飲んでいた。
燭台切がそれを水と誤って焼酎で割っていたことが判明したのは、彼女が酔ってからのこと。
「大丈夫ですか? 主」
「はい…大丈夫です、少し熱くなってきただけで…」
半分飲んだだけでほろ酔い状態になる主だが、今回はもう一杯飲んだ。
タオルを用意しながら、長谷部は心配そうに彼女の背中をさすってやる。
「お部屋に戻りますか? お連れしますよ」
「うーん…すみません、そうします」
明日も報告物が山ほどある。
ここで酔いが回るより、寝室でしっかり眠ったほうがいいと判断した彼女は、長谷部の提案にありがたく従った。
長谷部はゆっくり彼女を立たせると、腰に手を回して支えてやる。
「おっ、長谷部と主はどこ行くんだ?」
鶴丸は逃げようとする彼らにさっそく目をつけた。
「主を部屋までお送りしてくる」
「本当か? 送り狼になるなよ?」
「ならん!」
冷やかしてくる鶴丸だが、長谷部は一歩間違えればそうなるところを必死で抑えているのだった。
(まったく。酔いの回った主に手を出せるはずないだろう。…我慢だ、我慢)
彼女の柔らかな体を支えながら自分を律し、宴会場を出た。