第16章 ◆番外編3「見合い」
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「え…? 今度の遠征に、長谷部さんも…?」
「ええ。俺は一度遂行したことのある任務ですから、同行した方が良いかと。数日間、主の近侍を他の者に任せることになりますが…」
長谷部さんと二人で報告書類を作っていたとき、ふいにそう言われた。
来月に予定している難易度の高い遠征に、長谷部さんも行くというのだ。
「……だ、大丈夫じゃないでしょうか、山姥切さんたちだけで」
私はそう答えていた。
もう編成済みなのは、山姥切さん率いる遠征班の第二部隊。
「…何名か第一部隊と入れ替えた方が賢明かと思います」
「なら、三日月さんとか、鶴丸さんとか…」
「今回の遠征の経験があるのは俺だけです。俺が適任かと」
だめだ…説得できそうにない。
…じつは、長谷部さんが検非違使との戦いでお守りを使ってしまった後、まだ資金が足りず新調できていないのだ。
だから今は長谷部さんはお守りを持っていない状態。
私は心配で…わざと彼を難易度の高い任務に割り振らないようにしていた。
もちろん、長谷部さんには内緒で。
でも、今回の遠征は長谷部さんが適任だというのはごもっともで…。
「…わかりました…」
「…主。あの、もしかして…俺が留守にするのが寂しいのでしょうか?」
……え。
考えていたことは違ったけど、たしかにそれも間違いではなかった。
「はい…。寂しいです」
「…主…」
長谷部さんは顔を近づけ、こっそりと口付けをしてくれた。
長谷部さん…好き…。
だからこそ、心配で仕方ない。
彼が大怪我をして帰ってきたときのような思いはもうしたくないし、それこそ破壊なんてことになったら…。
何とか遠征までに、お守りが手に入ればいいのに…。