第15章 ◆番外編2「現代遠征」
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───とある本丸が随行軍を仕留めたとき、命乞いをした随行軍の一人を見逃しました。
かすかな時間を与えられた随行軍は、息絶えるその前に、残された最後の力でその土地に墓を建て、己を祀ったのです。
それは小さな「過去改変」となり、唐突に現代に現れました。
たった一人の随行軍の墓が時を越えて現代まで残り、厄を封じ込めた象徴としてその土地の人々に受け継がれているのです。
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「…そのお話が、今回の現代遠征に関係しているんですか?」
第一部隊のみを集めた広間で、主はこんのすけに尋ねた。
隣に座る長谷部とともに、彼女はもう一度指示書に目を通す。
『審神者へ
現代への遠征を命ずる。
場所は「花札温泉郷」にて「花岩」を訪問すること。
刀剣男士は一名のみ同行可能である。』
「この花岩って、現代では有名な観光名所ですが…どうしてここへ?」
主の問いに、 こんのすけは神妙に答える。
「花岩は、いわば過去改変の象徴。主さまはこの岩を昔から知っているかもしれませんが、それこそが世界線が変わってしまった証なのです」
「えぇ?」
「本来の花岩ができたのはほんの数年前。とある審神者が同情から随行軍の命を見逃し、そこに建てられてしまった墓が花岩なのです。その時代に残った墓が時を越え、現代にまで到達してしまった。……これは目に見える歴史改変のひとつであり、この事実を噛み締めるよう、全審神者が交代で花岩を訪れるべきだと政府で取り決めがなされたのです」