第14章 ◆番外編1「猥本」
────
湯殿に着くと、二人で着物を脱いで、中に入った。
長谷部さんの前で裸になるのはやっと慣れてきたところで…少し恥ずかしい。
「主。どうぞこちらへ座ってください」
長谷部さんは私の背中を流そうと、木製の椅子に私を案内してくれた。
でも、今夜は……。
「あの…長谷部さんが座ってください」
「え…?」
「今夜は私が、長谷部さんを洗いますから…」
「そんなっ…主にそんなことをしていただくわけには…」
「ダメですか…?」
「……ダ、ダメではありませんがっ…」
長谷部さんは困惑しつつも、腰にタオルを巻いたまま、観念して椅子に座ってくれた。
私は彼の背後に膝をついてしゃがむと、桶を準備する。
「主、それは…?」
「お取り寄せした高級石鹸です! すごく良い匂いがして、よく泡立つんですよ」
透き通った桃色の石鹸を得意気に見せてから、私はそれを桶に沈める。
桶の中で石鹸とお湯を混ぜて、ちゃぷちゃぷと泡を立てていった。
長谷部さんがゴクリと唾を飲む音が聞こえた。