第2章 ◆耳元で愛を ★★☆☆☆
「なっ、何を言うんです! 主はそのようなことっ…主はいいんですよ、無理をなさらずに…!」
「無理なんてしていません…! 長谷部さんは私のこと気持ち良くして下さったのですから、今度は私の番ですよね…? 上手にできるか分かりませんが…」
「い、いえ、でも、しかし」
「通達には、『互いに』と書いてありますから…」
これまで盾にしてきた通達を示され、長谷部は逃げられなくなった。
予想していなかった。自分が主に、とばかり考えていたから、彼女にしてもらえる、なんて。つゆほども。
バックンバックンと心臓が痛いくらいに鳴り出し、彼女の唇が目に入った。
この柔かそうな唇で…。
ゴクリと期待が漏れだして、動けなくなった。
「長谷部さん、失礼します…」
動きを止めていた長谷部は、彼女の吐息を感じる右耳がピリピリと痺れだし、その口の中に含まれたとたん──
─ぴちゃ…─
「あ………」
─ちゅ…ぴちゃ…─
「ある、じ……」