第2章 ◆耳元で愛を ★★☆☆☆
「気持ちよくてビックリしました…。私、こんなの初めてで…」
聞かずとも、主は感想を言ってくれた。しかも、『こんなの初めて』だなんて、男を悦ばせるだけの言葉も。
少し髪が乱れ紅潮した彼女に、長谷部は胸を押さえた。
(…ダメだ、もう俺の方が耐えられそうにない…。ここは、正直に主に言ってしまったほうがいいだろうか、口付けをさせてほしい、と。できれば今、それ以上もさせてほしい、と、正直に…)
「あの、主っ…」
長谷部が決意を固めて主に切り出そうとしたとき、彼女は、彼の隣へと移動し、すぐ近くに腰かけた。
「長谷部さんも、目を閉じますか…?」
(…え?)
突然彼女に耳元でそう囁かれ、何を言おうとしていたのか一瞬で頭から飛んでいった。
何を尋ねられたかはよく分からないまま、長谷部は「いえ」と答えていた。
すると、彼女はコクンと頷いて、体の重心をこちらに寄せて、顔を近づけてくる。
「あ、主!?」
「わ、長谷部さん、前を向いていてください…」
「あの、何を…?」
「え…? 次は私が、長谷部さんの耳を愛撫するんですよね…?」
思わず尻餅をつく勢いで彼女から距離を取り、囁かれた耳を押さえた。