第10章 ◆酔いの告白★★★☆☆
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私の部屋の前まで来ると、名残惜しく感じながら長谷部さんに体を向けた。
「長谷部さん。ありがとうございました。本当にお部屋に戻れますか?」
「…………ええ」
「ゆっくり休んでくださいね」
「………」
長谷部さんがなかなかお別れの挨拶をしようとしないため、私も部屋に入れない。
酔っているのかな。
それをいいことに、私は彼と見つめあった。
───ヒュッ
私たちの間を矢が横切り、柱に刺さった。
こんな予感がしていた。ううん、どこかで期待していたんだと思う。
酔った長谷部さんはどこか妖艶で、可愛くて…。
それを利用するのは卑怯だけど、こんな彼にめちゃくちゃにされたい、と思ってしまう。
それに…
─『主は俺のものだ』─
長谷部さんの言葉の意味が、知りたい。
「長谷部さん…文を読みますね」
私はそう告げて、足元がふらついている長谷部さんに代わって落ちた文を拾い上げ、それを開いた。
『口づけをせよ』
書かれているのは、それだけだった。
「……口づけ、ですね」
落胆が声色に出てしまった。
私も少しはお酒を飲んでいるため、気分が高揚している。
お酒の力を借りて、長谷部さんと気持ち良いことをいっぱいしたかったんだけど…。
今夜はおやすみのキスをして、終わりかぁ…。