第9章 ◆情熱合わせ ★★★★☆
「長谷部さん…具合悪いですか?」
主は無理して顔をこちらへ向けた。
俺は冷や汗をかいていて、主を失う日が来るのかと思うと、興奮とは違う苦しさが込み上げていた。
一旦落ち着くために、腰を止めた。
「…いえ…大丈夫です、主」
おそらく感傷的になることも媚薬のせいだ。
性的な欲求だけではなく、精神的な欲求も痛いくらいに湧き出ている。
「本当ですか? もっとしたいことがあったら、遠慮なくおっしゃって下さいね。私ばかり気持ち良くではいけませんから…」
主の優しさに感動するとともに、やはりそれを失う恐怖も増長していく。
まるでこれきりで彼女に触れられなくなる気さえしてきた。
「…主、こちらを向いてもらえますか?」
「はい」
一度モノを引っ込め、彼女の向きをこちらへと変えた。
赤く火照ったお顔と、ちゃんと対面する。
向き合ってしたい。彼女の表情をきちんと目に焼き付けておきたかった。
俺はこのままの向きで、もう一度彼女の太ももの間へと自身を差し込み、そして閉じてもらう。
「長谷部さん、恥ずかしいです…向き合ってするなんて…」
「こうしたいんです…主のお顔が見たい…」
雨と汗のせいで濡れた髪が彼女の顔に貼り付いている。
俺はそれを丁寧に整えてから、口づけをした。