第7章 笑顔
「服を着て、身だしなみを整えたら、車から降りて来い」
そういって信也は先に車外へ出る。預けていたスマホを受け取ると、待ち受けの画像を変える。トマトを手にし、輝くような笑みを浮かべた少女の写真。変更を保存し、スマホをスーツのポケットへとしまう。程なくして、身だしなみを整えた奏が車から降りてきた。
「こっちへこい」
振り向かずに声をかけられ、信也の横へと歩み寄る。
波の音。潮の香り。黄昏の紫とオレンジの交じり合った空。オレンジに輝く海。打ち寄せる波。
思わず感嘆の声が漏れた。
「奏。これからは、部屋を一緒にする。……意味が分かるな?」
夕焼けに染まっていても、分かるようになった。信也の照れたような赤い顔。それだけで、胸が躍る。つまり、そういうことなのだろう。
「わかりました。わ……じゃなくて……信也さ、ん」
~Fin~