第1章 躾
「赤点を取ったから様子がおかしかったんだな」
「うぅ……そのことは内密に……お願い、しま……す」
「ふぅ~ん。早くも躾の効果が出たな」
顔が赤くなるのを感じてシーツで顔を隠す。
目が覚めたら、シーツは新しいものになっており、何事も無かったように後処理されていた。
服の乱れも、いつの間にか脱がされていた下着とスカートも元通り。
脱がされた記憶も無いが、見たら履いていた物とかわらぬ下着だったので、押し倒された時から脱がされていたと思われる。
全く湿っていないのがその証拠。
乾かした形跡無し。
体のほてりも無い、玩具類も当然無い。
ただ、眼鏡を外したままの専属執事がそこに居た。
躾と称して自分をめちゃくちゃにした張本人。
しかも、口調は変わらずドSオーラを漂わせている。
「しかし、まあ。あれだ。お前、襲われないように気を付けろよ?」
「襲った張本人がそれを言うのですね」
「ばーか。俺意外に襲われるなって事だ」
「つまり葛城は私を襲うって事ですね」
「よく分かったな。えらいえらい」
あやす様に頭を撫でる葛城の大きな手。
優しい温もりにあふれた手。
いきなり手首を掴まれ、抱きしめられる。
「はっ離しなさい! 葛城!」
「もっかい、躾てやろうか?」
「離してください……葛城……」
「嫌だ。抵抗しない嘘つきな女の言う事は聞けん」
「!!!」
――俺に心配かけるな、奏。学校で虐められたんじゃないかと思ったんだぞ。
その呟きは奏に届いてはいなかった。
END