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【短編集】ブーゲンビリア【R18】

第10章 雨上がり


「何をやってるんだ!! こんなミスして、仕事をなめてるのか!?」
「申し訳……ございません……」

 この日、何度目かの謝罪をしている。同じミスを何度も繰り返し、くだらないミスを量産している。
“別れよう”
 その一言で、全てが終わってしまった気がした。私の中の何かもが。一人で、もうすぐ結婚出来ると思っていた。周りにも、そろそろかも、なんて一人浮ついていたのに。八年。私は、一人で、本気で好きだと思っていた。たった一言で、全てが終わった。追いかける事も、理由も聞けずに、ただ、泣き崩れた。左手の薬指にある婚約指輪も、外せず。
 もう、一週間になるのに。私は、これを、外せずにいる。仕事にも影響を及ぼしている。でも、どうしたらいいのか分からない。誰かに相談するのも違う気がするし、同棲していたアパートを引っ越す事も出来ず。いつの間にか消えていた彼の私物。残されたのは、私だけ。家賃や光熱費の引き落としも、いつのまにか、私の口座に変更されていた。清清しいくらい、用意が良い。本当に、独りよがりだったのだ。
 自分のデスクへと戻り、パソコンに向き合う。やり直し、ミスの修正、やることは山ほどある。ため息すら出ない。ただ、やらなければいけない事を、淡々とこなす。
 気が付けば、周りには誰もおらず、時刻は二十一時を過ぎていた。それでも、書類の山は無くなっていない。乾いた笑みが出る。何をしているんだろう。いつもなら、こんな量、二時間もあれば余裕で捌けるのに。スピードも落ちている。精度も落ちている。恋愛とは、こんなにも厄介な物だったのか。始めて知る。虚無感。
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