第30章 吐息の味
俺は産み捨てられた赤子の所に女を連れてきた。
「……た、大変!!赤ちゃんじゃない!
しかも…産まれてすぐじゃない!!
この子のお母さんは!??」
女は赤子を抱くと手慣れた手つきであやし始める。
雫
「…知らないんだ……」
「へ?じゃあ、あなた…この子のお父さんじゃないのね!?」
俺は頷いた
「…そうなのね…また産み捨てられた子か……」
その女の口振りは、
まるでこの赤子で初めてではないという感じだ。
雫
「…また……」
「そうなの…ほら…最近は飢饉で…みんな大変でしょう?
この蔵…随分前から"そういう人達"がやってきては…
産んだまま赤ちゃんだけ、放置して行っちゃうの…」
(…勝手だ……)
「最初は、
ここら辺の余裕のある家に養子として
引き取られて行ったんだけどね……
もうどこも引き取らなくなって…この裏の川に流しちゃうの……」
雫
「…………」
「あなたは旅人さん?それとも…武士様?」
雫
「いや……貴女と同じ……」
「……あっ!分かったわ!!あなたもしかして、
数日前に燃えて全滅したって言う隣村の人!?」
(隣村……そういう事にしておこう……)
雫
「ああ。実は…」
「そっか!それなら…うん、こんな不気味な蔵に居たのも頷ける。」
(…不気味……かな?)
「この子は私に任せて!!
出来るだけの事はしてみるから!!
あっ!でも…
私の家も兄弟が沢山居るから…此処でだけど……
もちろんあなたも手伝ってね!!!
母さんや父さんにもちゃんと、話しておくから心配しないで!」