第7章 殺しの任務
ドスッ
痛々しい音が辺りに響き、腹部に痛みを感じてから、私はやっと自分が殴られたということを認識した。それくらいに、私の意識から外ずれた速い攻撃だった。私の遠いところに、持っていたナイフが落ちている。
「…………」
その人は私を睨みつけるように見下ろし、そして私の方へ1歩ずつ歩みを進めた。
「………なぜ殴られたのか分かるな?」
私は咳き込みながら、彼…クソ親父を睨んだ。そして、ちらりとクソ親父の向こうで倒れている男を見た。数分前。家に不法侵入し、私に襲いかかってきたその男は、今ではクソ親父によって意識を失っている。
「………なぜ殴られたのか分かるかときいている」
いつの間にか、クソ親父は私の目の前まで来ていた。私は頷く。
「………約束を…破った…から」
私の言葉に、クソ親父は軽く頷き、そして片膝をついた。その目は怒りで燃えていた。
「何故殺そうとした」
「…その約束は、自分の命より大切なの?」
私はそう問うと、クソ親父は答えた。
「それは、本当に追い詰められた人間が言う言葉だ。お前は違う。最初からお前は殺すつもりだった」
……あの小屋には、盗聴器や隠しカメラなどがついているのだろうか…。私は本気でそう思った。クソ親父は分かっていた。男と私が面識があったこと、男が私に気があり…どうこうしようとしてたこと、それに私が彼を最初から殺すつもりでわざと後をつけさせていたこと。私が黙っていると、クソ親父は立ち上がり、未だ意識のない男の所まで歩く。
「…………ねぇ」
私も腹部を抑えながら立ち上がった。そして、彼に聞いた。ずっと聞きたかったこと。
「なんで殺しちゃダメなの?」
すると、彼は振り返らず答えた。さも、当たり前だと言うように。死が当たり前のように訪れるこの国で。
「お前が綺麗な手をしているからだ」
私の手なんて、とっくに綺麗じゃないのに。……まだ人殺しをしてないだけで。
「……………………絶対はぐらかされた…」
私の舌打ちとともに、はい、回想終わり。目を開けると、白い空が目に映る。日が昇ったようだ。私は勢いよく起き上がった。