第6章 私の初任務とあの人の存在
「逃げるつもりだったら、この街を離れてるよ。私の行動が不思議だったから、わざわざ迎えに来てくれたんでしょ?」
「……てめぇは今日の行動が、組織を裏切ったわけじゃねぇって言いてぇのか?」
「組織を裏切ったかって聞かれたら、そうかもしれないね。でも、私は最初から組織に忠誠は誓ってないでしょ?」
「………何が言いたい?」
「私が忠誠を誓ったのは、ジンにだよ。私はあなたの命令だけを聞くし、あなただけの安眠グッズだし、それにあなただけの駒だもの」
だからね…私は言葉を続けた。
「だから、あまり放置しないでね。構ってもらえないと、悪知恵働かせるからさ」
悪戯が成功した子供のようにクスクス笑った。ジンの驚く顔が見れて満足だ。私は彼の顔にそっと手を触れた。ものすごく冷たかった。
「………ジン、ちゃんと食べた?ちゃんと寝てた?」
まるで死体のように冷たい。それに心做しか、痩せたようにも思える。ジンはそれらに答えることなく、私を見ていた。
「………ジン?」
急に黙られると凄く困る。銃もまだ私に向けられたままだ。……こりゃ殺されるかな。嫌だなぁ…死ぬのは。だから、最後まで足掻くことにした。
「……それにね、ちょっとしたお土産もあるんだよ??」
「………………なんだ?」
やっと反応を見せたジンに、私は笑みを見せる。
「ジンが喜んでくれるものだよ」