第6章 私の初任務とあの人の存在
「あ、ジンおはよう」
なんとジンは昼過ぎまで起きてこず、私は苦笑いしながらそう声をかけると、ボーッと席につくジン。そして、私は手を合わせた。こんなジン、朝しか見られない。
「いただきます……ん?」
私はジンを見ると、ジンの目は、私をじっと見ていた。
「え……と…どうかした?」
その目は私を品定めしているようで、突然のジンのその様子に私は戸惑った。
「……………お前、日本に来たことはあるのか?」
ジンはそう私に問いかけた。……?なんの話だ?私は少し身構えながら答えた。
「ううん。ない」
「にしては、やけに日本について知ってるな?」
私はジンの質問の真意が分からず、内心とても焦っていた。なんだ?私は何を間違った?そう言えば、昨日のジンの様子もおかしかった。
「………そりゃあまぁ……あの人に叩き込まれたからね」
私は顔には出さず、味噌汁を啜った。ジンはそんな私をじっと見る。じんわりと汗が背中を伝う。
「……そういやぁ…お前を拾ったって奴の話、聞いたことなかったな?」
「………そうだっけ? まぁ、話しても面白い話じゃないけどね」
ふと、あることが頭を過ぎった。もしや……
「………その人がいる場所とか、心当たりがあるの?」
外に出れない私よりも、ジンの方が情報量も多い。もしかしたら…と、期待から心臓が跳ね上がる。しかし、ジンは首を振ったので、どうやら違うようだ。
「そいつは日本人か?」
ジンの問いかけは続く。私は首を振った。
「違う」
何故、日本人だと思うの。私の問いかけには完全無視のジン。
「そいつに他は何を教わった?」
まだこの尋問は続くのか…。私はげんなりしながらそう思った。だが、ジンの鋭い眼光にいつもながら私は何も言えない。私は諦めておかずに手を伸ばした。
「別に。1人でも生きる術を大体教わっただけだよ……」
「殺しは教わらなかったのか?」
私はピタッとおかずをとる手を止めた。ジンを見ると、ジンは笑みを浮かべていた………まさか……。私は自分の顔から血の気が抜けるのが分かった。震える手を抑え、私は箸を置いた。
「…………教わってない」
「なら、バーボンにでも教えを乞うんだな」
ジンは私から目を逸らし、正しく持ったお箸で味噌汁を啜った。そして、
「初仕事だ。お前に殺しの…な」
そう言って、にやりと笑った。