第2章 義理の父親が姿を消しまして
「俺は日本へ行く。お前のことは知人に頼んである」
そう知人に言い残し、私の前から姿を消したとある大人。私はギリッと歯を折れるくらい噛み締めた。それを直接本人から聞いたなら、そのまま一発殴ることもできたろうに…。それさえもさせることなく、あいつは去った。今まで住処としていた小屋を焼き払って。
一緒に住んでいたのはたった2年。あいつとの会話はほぼなかったし、最近は顔を合わせることも片手で数えられる程度。いつも寡黙で無愛想な男のことを、私は今更ながら何も知らないことに気づいた。恩がなかったわけじゃない、毛嫌いしていたわけではない。ただただ無関心だったのだ。どうでもよかった。ただ自分の家さえあれば、家に帰れば誰かがいてくれれば。それで……よかったはずなのに……
「………まじかよ……あんの……クソ親父!!」
勢いよく火の粉が舞う元住処を睨みつけながら、私は拳を握りしめた。