第13章 主人公に巻き込まれる日々かと思えば、私が巻き込んでいた
私は目の前で倒れた男を跨いで部屋を出た。少し古い木材の家…どうやら、ここが男たちの隠れ家のようだ。外を見れば、見慣れぬ風景だったが、車を走らせてそこまでの時間が経っていないことから、ここから脱走してもすぐに見知った道が出てくるだろうと確信する。だが、ここは3階であり、飛び降りるには怪我をする高さだ。
「……さて、携帯…携帯…と…」
恐らく、あと2人の男たちが持っているのだろう。私は声がする方へと歩き出し、そしてある一室へとたどり着いた。
「……あれが他の誘拐された人たちか…」
部屋には誘拐犯たちの他に、金髪の女性がひとりと、私より少し大きい少女がひとりいた。2人とも目隠しされており、少女は酷く動揺しているようだった。金髪の女性はやけに落ち着いている様子だった……ん?
「あの人って……?」
あの人がいるということは、別に私が動かなくてもよかったのか…。私は最近立て続けに起こる不発に肩を窄めた。誘拐犯たちの足元にはアタッシュケースがあり、それで誘拐が1回は成功していたことを知る。それで彼らが動き出したのか。
「金がこんなに手に入った!! やっぱりこのガキ攫って正解だったな!!」
アタッシュケースから身代金を取り出し、笑みを浮かべる誘拐犯たち。…味をしめてもっと欲しくなったのか…そして、金の欲目からもっといい家柄の子を…そう考えて金髪の女性や灰原を狙った…と。
「だけど残念…私にお金を出してくれる人はいないんだなぁ」
まぁ私自身あれくらいのお金はあるけどさ…そんな自嘲的な笑いを零す。私は誘拐犯が買い出しに行くという声を聞き、部屋を去るのを確認すると、そっと扉を開けた。そして、震える少女は置いておいて、隣の金髪の女性の目隠しを外した。女性は私を見て、ハッと息を飲んだ。
「…貴方は…!!」
「こんにちは。FBIのお姉さん」
私が手をヒラヒラと振ると、彼女から何故貴方がここに…そう聞かれたため、私は簡潔に事情を説明した。彼女の拘束を解こうとしたが、カルバドスからナイフを貰っておいてよかった…そう思いながら。