第12章 新たな転校生は波乱の幕開け
「大丈夫か…? せっかく楽しみにしていたのに残念だったな」
運転してくれるスコッチに、私はお礼を言う。あのままだったら、刑事からの事情聴取は避けられなかっただろう。ふぅっとため息を零し、私は背もたれに体を預けた。
「でも、よくここが分かったね。」
私はスコッチに連絡していないのに。そう聞く私に、スコッチはあぁ…と少し言いづらそうに口を開いた。
「…迎えに来いって連絡が来たんだよ…ライからな」
……そっか…と少し予想ができていた私は、無意識に持っていたガウンを握りしめた。ガウンから漂う強いダバコの匂いは昔変わっていなかった。
「…なぁ…なずな。ライはお前の…。って、眠っちまったか…」
私はすうっと意識を手放した。タバコのせいで、私は昔の夢を見た。燃え盛る小屋が…まだ赤く輝いていない…あの時の夢を。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
~誰かside~
「……貴方から連絡してくるなんて珍しいじゃない、ジン」
優男の顔から一瞬にして美女へと変貌した女。女は長い金髪をうっとおしそうに掻き上げた。
「それで、何の用?」
連絡してきたと言うのに無言を貫く男に、女はそう問いかける。面倒な厄介事を煩わしいと思っていた女だったが、この男で発散できるだろう…とそう思っていた。だが、電話口の男が口を開いた瞬間、それは間違いだったと気づく。
「………ネズミをいつまで泳がせているつもりだ…ベルモット」
男の不機嫌さに思わず笑いが零れる。貴方のキティが自分以外といるのがそんなに気に食わないのかしら…と思わず手元の写真を眺める。可愛らしい容姿からは想像できないほど優秀な彼女…ジンのお気に入りの座は昔も今も変わっていないようだった。
「あら、そういう貴方は随分泳がせるのが上手のようねジン。貴方の仔猫ちゃんは隠し事が得意だもの」
言わないつもりだったが、女はそう切り出した。男の用は分かっていたし、そのネズミ駆除も動いていたところだ。だが、女は男が目障りだった。ジンがいる限り、あの可愛い仔猫ちゃんは彼から離れようとしないだろうから。電話口で男が苛立っているのが伝わり、更に煽るように笑う。ごめんなさいねキティ…でもね、貴方が悪いのよ…
「赤井秀一…彼が仔猫ちゃんの父親だって気づいているのでしょう?」
あの男にしか見せないような顔をしちゃうから、私嫉妬しちゃうじゃない。