第8章 体育祭、その前日譚
USJでのヴィラン襲撃事件から早二日。私と焦凍は一日ぶりの雄英に登校していた。駅前のディスプレイは二日前にあったヴィラン襲撃事件のニュースばかりで、雄英高の制服を着ていたのと、一瞬だけ私達1-Aが映っていたのもあって、視線が刺さる刺さる。特に紅白綺麗に分かれた髪色をしている焦凍は特徴的過ぎてバレやすく、さっきから好奇の目やらスマホやらを向けられているせいで大変機嫌が悪い。それでも私をそういった視線から庇うように立ってくれたりするんだから、ほんと紳士だと思う。これで惚れない女の子がいるなら教えて欲しい。
そんな地獄のような通学があったせいで、教室内はまるでオアシス。周囲の話題は通学中と同じように襲撃事件のことだったけど、私達に視線が集中しないから楽でいいや……。軽い音を立ててまた一人教室にクラスメイトが入ってくる。あのもさもさ頭は、緑谷君だ。USJで大怪我を負っていたけど……普通に立って歩いているし、手に包帯を巻いていたりする感じもない。どうやら、リカバリーガールに綺麗に治してもらえたらしい。そういえば、私はまだ緑谷君とお話したことなかった。丁度USJという話題もある。いつも一緒にいる麗日さんと飯田君に挨拶して自分の席に向かっていく緑谷君に私から声をかけた。
「おはよう、緑谷君。怪我はもう大丈夫?」
「し、至情さん!?う、うん、大丈夫だよ。ほら。」
あんまり女の子と話し慣れていないようで、顔を真っ赤にしながら右手の袖をめくってぶんぶん腕を振る。ほらね!これだけ動かせるよ!もう大丈夫!って言いたいんだろうけど、反応がかわいらしいなぁ。こう、思わず撫でたくなる……。流石にしないけども。
「うん、だいぶ元気そうだね。」
「あはは……あ、そうだ。至情さん、ずっとお礼を言いたかったんだ。あの時、僕を救けようとしてくれたよね。ありがとう。」
恥ずかしそうに笑っていた緑谷君は、表情を一変させて真面目な顔で私にお礼を言った。えっとあの時って……ああ、緑谷君がオールマイトを救けようと飛び出した時のことか。確かに身体は反射で緑谷君を救けようと動いたけれど、結局間に合わなかった。大した助けにもならなかったのに、それでもお礼を伝えてくれるなんて緑谷君はやっぱり人がいい。