第5章 戦闘訓練
別に私自身を出していくことが嫌なわけじゃない。友達とテンション高めに絡んだりするのだって好き。でも、それでも私の中にどこか冷めた所があるのはずっと昔から。
無理に振舞っているとか、そういったことは一切してない。けど、私が私らしくあれる場所は焦凍の隣だけだって思っているような、そんな変な気持ち。ああ、つくづくこの感情が嫌になる。
誰かを好きだと思う心は綺麗なものなんだって、どこかの誰かが言っていた気がする。もしそうなら、私が抱くこの黒くてザラザラした醜い感情はなんだろう?
決して誰にも見せられない、見せたくもない、愛や恋に似たなにか。ただ、ひたすら焦凍を求めるだけの醜い感情。それを胸の奥に押し込んで、押し殺して、潰していく。
“look at me.”
脳裏に一瞬鈍く光る刃が浮かぶ。暗い居間、静かに振り上げられた刃が廊下から漏れる光に反射してキラリと輝く。――包丁だ。
「」
嫌だ、これ以上、思い出したくない。
“love me do.”
押し込んだ感情に潰された人魚姫が、感情の核を表す言葉を零したような……そんな気がした。