第15章 束の間の平穏
二日間の休日も終わり、ざぁざぁと雨が降る通学路を焦凍と肩を並べながら一緒に歩く。肩を並べる、は隣という意味じゃない。二人で一本の傘を差しながら、肩をぴとりとくっつけて歩いている。……ほんと、どうしてこうなった。
私の傘がない訳じゃないし、私が傘を忘れてきてしまった訳でもないのでそこは勘違いしないで欲しい。なら、どうして相合傘をする羽目になったのか。それは、端的に言ってしまえば焦凍が「別に、一緒に使えばいいじゃねぇか。」なんて言ったから。断ればよかったんだろうけど、ダメか?と寂しそうに眉を下げる焦凍には勝てなかったよ……。
どうにも、冷さんのお見舞いに行って帰ってきた後から焦凍の距離感がまたおかしくなってきている。元々スキンシップ多めで距離感はおかしかったけど、なんて言えばいいのか……そう、前までのは兄妹でのじゃれあいだったのが急に恋人同士がするようなスキンシップに変ってしまったと言うべきか。前のスキンシップはまだマシだったんだと、今ならわかる。
今も手を繋ぎたいからとわざわざ差しにくい右手で傘を持って、左手で私の右手と繋いですりすりと指を絡めている。こんな状態が三日間も、しかも家の中だけじゃなくて外でも続いてしまっているのは、流石にまずい。もう学校も近いし、通学中の生徒の姿もちらほらと見えている。誤解を生まないためにもと肩を少しだけ離すと、それを察した焦凍がすぐに私に声をかけてきた。
「……奏。」
「なに?」
「もっとこっちに寄れ。濡れちまうだろ。」
「……ハイ。」
親切心からの言葉だとは思うけれど、その親切心を他の所で発揮してほしかったなぁ……!私を濡らしてしまうのは不本意だ、とじぃっと見つめて早く寄れと促してくる。その強い眼力に負けて肩をくっつけると、焦凍は満足そうに頷いた。
「ねぇ、焦凍。体育祭の終わった後で私も焦凍も知名度も高くなっちゃってるし、付き合ってるわけでもないのにこういうことするのは、その……色々とまずいと思う。」