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人魚姫は慟哭に溺れる【ヒロアカ※轟夢】

第14章 体育祭の終わりと、スタートライン


 ――ぱちり、と閉じていた目を開く。見えるのは真っ白な天井と、青みがかった仕切りカーテン。……そっか、私あの後気絶しちゃったのか。倒れたせいか、それとも使用上限を超えて個性を使ったからか、まだ頭が若干ぼんやりとしている気がする。

「奏……!起きたのか。」
「焦凍?」

 優しい控え目な声が聞こえて、そっちの方へ向く。ぎゅっと私の右手を両手で握りながら、私を心配そうに見つめる焦凍がそこにいた。随分と心配をかけてしまったらしい。

「私、どれくらい寝てた?」
「時間まではわかんねぇ。けど、一試合分はしっかり寝てたぞ。これから表彰式だ。」

 ……つまり、私は焦凍と爆豪君の決勝戦を見られなかったってことか。見たかったなぁ。でも、一度寝たら核石が回復するまで起きれない私が一試合分だけの睡眠で起きるなんて珍しい。

「お前、無茶しただろ。核石からあんな黒い光が出んの、初めて見た。寝てんのに核石の色も戻らねぇし、心配した。」
「そうなの……?心配かけてごめんね。」

 焦凍に手を離してもらって核石を確認してみる。焦凍の言う通り、寝ていたはずなのに色が回復していない。いつもと雰囲気の違う夢、そして回復していない核石。……不安がないとは言わないし、言えやしない。けどその前に、目の前にいる焦凍を安心させてあげたいと、そう思って焦凍の頭を撫でようと自由な左手を持ち上げる。それだけの仕草が、とんでもなくだるい。
砂がたくさん詰まったジャケットを着こんだような重さに耐えながら撫でると、焦凍が目をそっと細めた。そのまま撫でていると、カラリと保健所の扉が開く音が聞こえてくる。

「おや、起きたのかい。タイミングがよかったね。」
「リカバリーガール。」

 開いた扉から入ってきたのはリカバリーガールと相澤先生、そしてミッドナイト。これから表彰式だって言ってたし、焦凍を呼びに来たのかもしれない。

「目を覚ましたか。体調の方はどうだ。」
「めちゃくちゃだるいですが、それ以外は特に……。」

 核石の件があるけれど、これ以上個性を使うこともないだろうから口にはしない。私の体調が大丈夫そうであることを聞いて、ほんの少しだけ相澤先生の口元が緩んだのが見えた気がした。
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