第13章 対決、爆豪
爆豪君と切島君の試合は、相手が根を上げるまで殴り合うというヤンキーも悲鳴を上げそうな苛烈なものだった。いや、仕方ないと理解はしている。だって、切島君の個性は"硬化"で爆豪君は"爆破"。そりゃ、遠慮なしにボンボン爆破しながら殴るよね……。
ため息を吐きながら、次に始まろうとしている焦凍と飯田君の試合をぼんやりと眺める。この試合が終わったら、次は私の番。それまでに爆豪君に勝つ方法を考えなくちゃ。
今までの爆豪君の戦闘を見ていてわかったことは、彼がスロースターターってこと。時間が経てば経つほど、威力の大きな技を使えるようになっていく。ただ単純に手のひらを爆破させる個性だったら威力は変動しないはず。つまり、手のひらから出る何かが爆発物になる個性だって推察できる。それがなんなのかだけど、人体で手のひらから出るものって言ったら……。
「……ああ、なるほど。汗かな。」
手のひらから分泌される汗が爆発物だとしたら、汗をかくほど強くなる。でも、汗かぁ……。汗が切れるまで戦うなんてほぼ不可能だから、使用上限を狙った長期戦はダメ。なら、エンジンがかかってくる前に速攻で攻略できないかって考えると、これもまた厳しい。なにせ、場外を狙って投げようにも爆豪君は空を飛んで戻ってこられる。
「残るは気絶させるって選択肢だけど、そういった訓練はしてないんだよね……。」
私に期待されたサイドキックとしての役割は焦凍の盾となること。如何にヴィランを焦凍に近づけず、相手の隙を作るかに重きを置かれた訓練を私は受けてきた。だから、相手を効率よく無力化する方法を私は知らない。
首に手刀を決めたら意識を奪えるってよく聞くけれど、それもちゃんと訓練した人がするからできること。私のような素人がしていいものじゃない。……もういっそ、首にサーベル押し当てたら判定勝ちできないかな……?
「でも、“参った”って言わせないとだめなんだよね。首にサーベル当てても、爆豪君の場合私の身体に手のひら当てれば引き分けに持ち込める。後ろから当てても、爆破の衝撃と光で距離を取り直されそう。」
……ダメだ。降参って言わせられる方法が思いつかない。速攻も、長期戦もだめって……どうしろっていうの!?切島君みたいに殴り合いしろって!?