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人魚姫は慟哭に溺れる【ヒロアカ※轟夢】

第11章 チアリーダーと、シリアスと、ガチバトル


「緑谷君。焦凍と全力で戦ってよ。そして、言ってあげて。“全部、君の力でしょ”って。」
「至情さん……」
「焦凍が救われる。それは、私の望みでもあるから。だから……よろしくね、緑谷君。」

 緑谷君の肩を一度叩いて、ゲートを後にする。もう何も言わなくても、緑谷君は全力で焦凍と戦ってくれるだろう。ううん、きっと話さなくても緑谷君のことだから、元々そうなっていたかもしれない。それでも、少しだけ心は楽になった。
……なんて、ちょっと嘘を吐いちゃったな。本音を言うなら、救けるのは私がよかった。かつて焦凍が私を救けてくれたように、王子様になってみたかった。

 わぁっとまた歓声が上がる。多分、次の試合――今思い出したけど、常闇君と八百万さんの試合だ――が始まるんだろう。心が少しばかり晴れたとしても、やっぱり観戦する気分にはなれない。この試合の勝者が私と当たることになるけれど、あまり関係はない。どちらの個性も、もうしっかりと見たから。

「でも、常闇君と騎馬戦で組めたのは幸いだったかも。」

 視野が意外と広く、動きも悪くないのは騎馬戦で実感した。常闇君も、私の速さは試合で見たはずだし多分何かしらの対策はしてくるとは思う。でも、構えていたとしても浮いてしまえばこちらのものだし、浮かなくても“まいった”と言わせる方法はある。
八百万さんの方はもっと単純。確かに“創造”という個性は汎用性が高くて厄介だけど、物を創るのに時間がかかる時点で私の脅威にはならない。作る前に、私が投げる方が早いからね。
 騎馬戦開始前と比べて、随分と黒ずみが増えた核石を見る。あと使えるのは大体70%くらいかな。想定したよりも余裕を持って試合に挑めている。私は一つ頷くと、そっと通路の奥へと歩いて行った。
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