第10章 騎馬戦、開幕!
会場の全体が予選から巻き起こった大番狂わせに熱狂する中、ミッドナイトは騎馬戦について細かい競技説明を私達に聞かせた。それによると、騎馬のポイントはチームの合計点で、点がプリントされた鉢巻きを騎手が首から上に身に着けて互いにそれを奪い合う。奪った鉢巻きも首から上に着けないといけないから、数が多くなるほど管理が大変になる。そして特殊なのは、騎馬が崩れたり、鉢巻きがなくなったりしても失格にはならない。ただし、悪質な騎馬崩しの為の攻撃は一発で退場となる。……つまり、よほどのことがない限り鉢巻きを奪っても敵は減らず、フィールドには10~12組が残り続けることになる。
改めて考えても、常に狙われることになる緑谷君はデメリットが多すぎる。後から1000万を狙った方が当然ポイントをキープできる確率も高くなるから、最初から1位と騎馬を組もうと考える人はほぼ0。チーム決めの交渉から特大の試練が降りかかっている。まぁ、そのデメリットを覆すだけの策があれば話は別なんだけど。……困ったな、緑谷君には是非とも最終競技まで残ってほしいのに。
『それじゃ、これから15分!チーム決めの交渉スタートよ!』
無情にも、ミッドナイトの宣言によってチーム決めの交渉がスタートする。緑谷君に残ってほしいのも本音だけど、だからって策もなしに緑谷君と組むつもりはない。私は私でどう乗り切るかを決めないと。図らずも、焦凍のおかげで上限までは余裕がある。私が組むなら、スピード重視のチームがいいかな。2位だけど、緑谷君がいるおかげで注目度はあんまり高くなさそうだし、翻弄してポイントを取っていこう。
そう考えていると、隣から右肩を突かれた。
「奏。俺と組まねぇか?」
「焦凍と?」
「ああ。俺と奏、あと八百万がいれば攻撃も防御もできるチームになる。」
焦凍が私に明かした作戦を簡単に纏めるとこうなる。私が機動力になって焦凍が牽制と拘束を担うチーム。八百万さんは、“創造”の個性を生かしたサポート役だ。
八百万さんにローラースケートでも作って貰えば、私が個性を節約して使ったとしてもある程度のスピードを維持できる。逃げる相手に瞬時に接近して凍らせることも、逆に狙ってくる相手を凍らせることもできる、と。