第9章 体育祭、開催!
ぽんぽんと破裂音を響かせながら雄英高校の空に号砲の花火が打ち上がる。今日は皆が待ちに待った雄英体育祭の開催日。普段は静かな校内にも売店がずらりと立ち並び、大勢の一般客やマスメディア達がそれぞれ足を踏み入れる。当然、ヴィランの襲撃があったばかりだからチェックも厳しいものになっている。それでも今日雄英高校を訪れる人はとんでもない人数になっていた。
雄英体育祭は個性ありきのスポーツ祭。前に相澤先生が言っていた通り大いに盛り上がる。参加者は雄英に所属する生徒全員。ヒーロー科は勿論、サポート科や普通科、経営科まで全て参加する。まぁ、一番派手なパフォーマンスが期待されるヒーロー科が主役のお祭りだ。
その主役の中の一つである私達1-Aは、皆揃って会場内の控室にいる。テレビ中継されるような盛大な行事でほとんど全員が緊張しているものだから、部屋の中はとっても静か。
緊張していてちぐはぐな言動をしている人はいるけれど、その中でも気になるのは焦凍。ぐっぐっと足の筋を伸ばしている焦凍が纏う雰囲気は、いつもよりも刺々しい。緊張しているというよりも、どちらかというとイライラしているように見える。私が自室に戻った後にエンデヴァーさんと何かあったとか……?
聞いてみたい、けど聞けない。集中を乱す原因になっちゃうだろうな、とは思っても焦凍を見ているとつい視線を送ってしまうから焦凍に背を向けるように私もストレッチに励む。
「あーあ、やっぱコスチューム着たかったなぁ。」
「公平を期すため、着用不可なんだよ。」
静かな部屋だから、芦戸さんと尾白君の会話がクリアに聞こえてくる。コスチュームか。いくらヒーロー科が主役とはいえ、コスチュームまで使用すると他の科の立つ瀬がない。コスチュームアイテムの装備が可能なのは、個性使用の為に申請した人と自作したサポート科の生徒だけ。ただし、靴までは指定されてないから、私や他の人も靴はコスチュームから持ってきていたりする。
ある程度ストレッチを終わらせて、ぐっと背筋を伸ばす。結構な時間をこの控室で過ごしてるけど、まだ始まらないのかな。少々飽きてきて、ロッカーに仕舞ったスマホを確認しようかとベンチから腰を上げた。