第7章 比べたら負ける▽阿散井 恋次
「いや、良いよ。……ルキアちゃんと私を比べたら、どうしたって負けるのは私だもん」
こういう時くらい振り向いて笑えよ、私
「何言って……「んじゃ、私は眠くなったので先に帰りやす!」
恋次の言葉を遮って軽く手を上げてその場を走り去る
帰る場所は一緒、だけど…一緒には帰れるわけない
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「どうしたの、今日はいつもより元気ないね」
「そうかなー、もりもりですよ」
両腕を曲げてゆみちーを見る
「顔色悪いよ。一角にバレたらうるさいよ」
「げっ。それは嫌だなー」
縁側の外に足を放り出したまま上体だけを倒し、座布団の上に正座をするゆみちーの膝に頭を乗せる
「ちょっとそこで寝るつもり?」
そんな風に言うくせに頭を退かせるどころか優しく慰める様に撫でてくれる彼の手
「ゆみちー…」
首を傾げる彼を見上げながら、放り出した足を縁側にあげる
「私の心はどうしてこんなに弱いのかな…。恋次がルキアちゃんといる所を見ただけで苦しくて、変な事ばかり考えちゃう。やだなぁ…」
「……良いんじゃない?それだけ千穂が阿散井を好きって事でしょ」
私の弱音をちゃんと聞いてくれた後に告げられたゆみちーの言葉に、何か救われた様な気になってしまう
「何やってんすか?そんな所で」
そこで聞こえてきたのは、話題の中心人物の声
「こいつ、ちょっと借ります」
「どわっ…!」