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蟲姫

第4章 旅立ち


「…さすがに遅すぎやしないか?」
が小屋を出ていってから2時間程が経過した頃、荷物の整理をしていたギンコは不審に思い外を伺ってみた。すると…。
「!!?」
中粒程度の雨が降り出した中、が小屋の前で倒れていたのだ。それもそれほど大きくはないものの血溜まりの中で。
(一体何があった!?)
雨に濡れることも厭わずに駆け寄り、その体を抱き起こすと既に冷えきっており、肌も更に白さが増していた。
(脈は弱々しいがまだある。しかしこれは出血が深刻か…)
とにかく止血が優先と切り替えてギンコは処置を始めた。


(あれ…私…)
意識が戻り、目をゆっくり開けると視界には見慣れた天井が映った。
(確か…首元を負傷して…小屋の前まで来て…どうしたんだっけ…)
どうやら意識が途切れたらしく、小屋の前まで来た後のことが全く思い出せない。そして現状に至っている理由として考えられるとすれば、それは現在泊めている客人の蟲師。
視線を淡い光が見える方へ向けると、案の定その蟲師がいた。
「ぎ…こ、さ…」
「ん?ああ起きたのか。気休めにしかならんが今痛み止めを調合してる。もう少し待ってくれ」
(痛み止め…)
薬は嫌いだ。苦いし、何より私に与えられるものはほとんどが死なない程度の毒ばかりだった。首の怪我のためとはいえ、流石にその痛み止めを口にすることに抵抗を感じてしまった。
「いら、ない」
「馬鹿言え。ただでさえ雨に打たれて化膿する可能性があるんだぞ?怪我の深さからしても痛み止めも無しにいられるとは思えんがね」
「くす、り…嫌なの…」
「ワガママ言いなさんな」
「嫌」
ズキズキと痛む首を必死に動かし、拒否の意思を伝える。すると、ギンコさんは溜息をつきとんでもないことを言い放った。
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