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蟲姫

第3章 蟲姫


今にも降り出しそうな空の下、ギンコはが1人暮らしている小屋に入った。
一通り部屋の説明を受け、荷物を部屋に置き居間に戻った。
「」
「なぁに?」
「お前さんが"蟲姫"なんて呼ばれるようになったのは何故だ?」
「…そのことに関してはさっき外で話したことが"そう"よ」
あまり触れられたくないのか、誤魔化すような口振りをされる。しかしギンコは引かなかった。
「何か、特別な理由があるようにしか思えん。一体なにがあったんだ?」
真剣な顔に居心地悪いように俯く。表情はみえない。
「何故、知りたいのですか?」
「が本当は村で暮らしたいと願っているように見えたから…では駄目か?」
図星だった。
こんな離れまで追いやられることを確かに受け入れはした。これで彼らを守れるのならと、仕方ないと言い聞かせて。でも本当は村で同世代の子達と遊びたかったし、蟲を従える力なんてなければもっと生きやすかったろうに。
「…貴方は人をよく観察なさっているのですね」
「まぁ、蟲に関係した人の観察ならよくやっているがね」
「わかりました。お話します」
やがて観念し、は"蟲姫"と呼ばれるようになった経緯をぽつりぽつりと話し出した。
「蟲を従える力があることに気づいたのは3歳の頃です。その日は両親が出稼ぎに出てしまい、何故か絶対に家から出るなと釘を刺されました」
雨が降っている訳でもないのになぜ?そう思いはしたものの、素直に頷いた。
「しかし、まだ幼い私には雨すら降っていないのに家にこもっているということはとても退屈で、たまたま家の近くにいた蟲に"おいでおいで"と言って招き入れたんです」
元より蟲を寄せてしまう体質なのは知っていた為、それで寄ってきたのだと勘違いしてしまっていた。
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