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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第5章 ボクはキミを




――リビング。


「出前、来たみたいだ!」

「あはは!蕎麦のめぇーんかいー、トイレんかい、いっちくーい!」

「トイレか?はやく戻ってこいよ!」


ドアを開ければ、そこには八乙女楽が蕎麦を片手に立っていた。


「どうも、ご苦労さまでーす」

「毎度どうも」

「あ!噂の八乙女のそっくりさん!ひえー。本当に似てるなー!」

「よく言われます。はい。天ぷら三人前。熱いよ」

「お、サンキュ」


楽から蕎麦を受け取れば、その後ろから紡の声がした。


「こんばんは。夕飯の残りを持ってきました」

「……」

「あぶね!いきなり手離すなよ蕎麦屋さん!」

「悪い。―――よう。久しぶりだな」


楽が紡に言えば、紡は笑顔で答える。


「あ、お蕎麦屋さん!お蕎麦とってたんですね。じゃあいらなかったかな」

「あんたの手料理?何つくったんだ?」

「筑前煮です。今日は零さんも帰ってくると聞いていたので、お野菜中心に」

「うまそうだ。いらなかったらオレが食うよ。蕎麦、テーブルまで運ぼうか」

「ありがとうございます」



そして、蕎麦屋も一緒にリビングへと上がる。



「おい…こんなイケメンオーラ溢れるそば屋が存在してんの許せないんだけど…」

「ふふ、改めて見ても、楽さんに似てますよね。楽さん、怖そうですけど、お蕎麦屋さんみたいに優しいんですよ」

「八乙女楽、好き?」

「はい、とても」

「あんたみたいな子なら、八乙女も落とせるんじゃないか?」

「とんでもない、私なんか!それに、万が一、夢のようなことがあったとしても、楽さんは人気アイドルです。他の事務所のタレントさんと特別な関係には、絶対なりません」


紡の言葉に、楽は残念そうにそうか、とだけ溢してから、改めて続けた。


「……なら、ただの蕎麦屋は?」

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